使用真空管:EL34       

電力増幅回路形式:3極結合シングル       

電圧増幅段:2段(12AU7シングル+12AU7パラレル・NFBつき)        

このアンプのコンセプトは、「少しだけ興味を持った人が長く使えて長く楽しめるアンプ」です。       

そのコンセプトに基づいて、もし、読まれている皆様の中で「このアンプがほしい」「このアンプを作ってみたい」「話を聞きたい」という方がおりましたら、私はできるだけ期待に応えたく思っております。       

遠慮無くご連絡頂ければと思います。       

連絡先は右側メニューの「mail」をご参照ください。       

それでは、以下に詳細を解説いたします。       

●はじめに   
 私は今まで、数個の真空管アンプを作ったのですが、どれもワンオフでありました。    
それらは、私は幸運にも「よい人脈」に恵まれ、よい部品やレアな部品を手に入れて作ったものでした     
中でもRCAの280および245については、おそらく私の様な若輩者が入手できることなど、本当にまれなことだと思います。      
そこまで行かないとしても、片チャンネルで数万円もするルンダールのトランスやマッチドペアの真空管で作ったものの評論をして発表したとして、他人の風評だけでどれほどの人がそんな大枚をはたいて同じモノを手に入れようとするでしょうか。      

        

これは、読み替えれば、HPに載せたとしても、複製できる人がいない=自己満足であり、オーディオの文化に何ら貢献していないことを意味しております。       

パブリックな媒体に載せて発表する上は、やはり「誰でも作れる」「誰もが恩恵を受けられる」ものである必要があるかと思います。       

        

一方、この趣味をやり始めてから「真空管の音ってどういうのなの?」という質問をよく聞く様になりました。       

しかし、残念ながらこれに対する明確な答えはできません。       

音声ファイルで送るにも、録音した時点で、本来の音とは違う癖が出てしまいます。       

それは、自分で味わってもらうしかありません。       

        

しかしながら、市販品は非常に高価です。       

10万円は当たり前の世界です。       

ちょっと興味を持った!ボーナスが出た!奥さんからお小遣いをもらった!じゃあ、そのお金で買えるもの・・・10万円は無理ですよね       

しかも、刺さっている真空管は新品であり、一流企業が真空管の性能にしのぎを削った世代のものではありません。       

つまり、ここでも結局、入手の困難さと、先立つものがかかるわけです。       

        

ここでは、普通の人が普通に使えるモノ、曰く、どこでも手に入る、低価格、しかしながら、真空管の魅力と真空管だからできる楽しみを十二分に味わえるアンプを提案したく思います。        

        

●コンセプト       

コンセプトは「多くの人が興味本位で手軽に持ち、長く楽しめる」アンプです。       

 まず、モデルケースとして以下の様な人を考えます。一般的に存在する多くの人たちです。
1.社会人で、会社員。 結婚している。10万円は興味本位で出せない  
     

2.オーディオに興味を持ち始め、真空管の音に興味がある。       

3.秋葉原は遠い。マニアの知り合いもいない。マニアな部品は入手困難。真空管知識は皆無。       

        

 こんな人のニーズを考えます。       

        

1.細かいマニアな部分はとことん削り価格を重視する、ただし、実用となるオーディオクオリティーの       

  真空管アンプとして平均的に使えるラインの音質、音量、質感を持つこと。       

2.真空管だからできる何かを味わえること。必ず何かしらの価格対効果が得られること。       

3.どこでも入手が簡単な部品であること       

       

これを読み砕くと      

1.廉価な部品を使用する。価格は初期投資5万円以下をMUST。3万円クラスをターゲット。       

  出力は5W程度以上。見かけは高級家具の様であること。本物な雰囲気であること。      

2ー1、真空管の音を楽しめること。交換が楽しめること。       

2-2、プチステップアップが容易にできること。=部品間の空中意線は原則禁止       

3.素子類は、現行品であり、一般的なパーツ屋(モデル的にはマルツ電波に定常的においてある部品)       

  を使用する 。       

  真空管も、地方の楽器店で入手可能な部品を使用する。
  
     

以上のようになると思います。
 

       

●回路選定       

以上の書き下しから、とりうる部品と回路構成を考えた。       

シャシー:弁当箱シャーシ不可。理由はサイドウッドを付けたとしても、安物感が出てしまうから    

      です。       

      そこで、前回からお世話になっている坂さんに、特注シャシーと作ってもらうこととしま    

      した。       

      (なお、坂さんには、掲載のことも申し入れており、今回と同じシャシーも    

       注文すれば作って頂けます)       

使用真空管:       

     ・出力管       

        入手ができる真空管はたくさんありますが、楽器屋で注文可能であり、かつ安価で       

        そこそこのパワーが取り出せるとなると、KT88またはEL34(6CA7)があります。       

        その中でも、入手、価格ともに安いのがEL34でしょう。       

     ・電圧増幅管       

        おそらく、オーディオマニアの好む多くの管はほぼ入手困難でしょう。       

        入手の難易度から行けば、12AX7そして12AU7となるでしょうが、       

        12AX7はEL34をパワフルにドライブ、というには出力インピーダンスという意味で頼りなく、       

        ノイス面でも少し心配です。       

        そこで12AU7を使用します。       

     ・トランス       

        価格上のソーシングの結果、残ったのはノグチトランスのみです。       

        景観上も、ムキ出しのモノを使うわけにはいきませんのでこれ以上は落とせません。       

        

        チョークコイルはPMC-1520Hです。最初は無しを考えたのですが、リップルが    

        取り切れませんでした。       

        FETも考えましたが、回路が多少なりとも複雑になり、作りにくく、後のステップアップや    

        改造に手間になりそうです。       

        そこで、チョークは標準搭載にしました。       

        

        OUTトランスはPMF-10WSで、10Wのモノを使いました。       

        

        パワートランスはPMCー170Mを使用しました。       

     ・小物       

        抵抗やコンデンサーなど、どれもどこでも手に入るもので、オーディオ用のモノではありません。       

        また、電解コンデンサーにパラでフィルムを入れるなどもしていません。       

        ですから後々、同じ大きさのオーディオ用のモノに入れ替えるのもいいとお思います。       

        理由は、やはり価格ですね。ここで奢り始めてしまうと、コンセプトが緩くなるので。       

        たとえ数十円でも、ちりも積もればです。       

        こういうところでコンセプトを見失うのは技術者として失格です。       

        ターゲット層と影響代を考えたら、やはりここは通常品でしょうね。       

回路構成       

       回路構成は、部品点数から行ってもシングルでしょう。       

       パラレル化することと、多少の出力トランスの価格差を考えたら、それに音質面も考えて       

       真空管らしいものなら、やはりオーバーオールFBなしのシングルでしょう。       

        

       初段・ドライバーは、増幅率、出力インピの面で、ハイμ1本はあり得ないとして       

       1.プッシュプル       

       2.カソフォロ       

       3.低ミューパラレル       

       結果としては、癖がすくなさそうなこともあって12AU7のパラレルとしました。       

       また1本余ってる12AX7を使える!なんて言う理由もあります。       

       初段に12AU7をシングルでおくことによって増幅率を稼ぎます。       

       初段の癖を持ち越すつもりはないので、こおの2段にはFBを付けます。       

               

       パワー段は、五結・・・はないとして3極とウルトラリニアはやってみて選びました。        

       結果、ウルトラリニアは使い物になりませんでした。       

       (シングルのウルトラリニアは音質的に使い物にならない???       

        NFBかけたら、ULの意味ないですし)       

        

●制作       

      全回路図と部品はこちらに掲載。(準備中)       

      まず、電源と増幅部分の回路を別途造ります       

      全部10P平ラグ板に載せます。       

      電源にはいくつかの端子の余裕がありますが、これは、あとで整流ダイオードを載せます。       

      出来上がったら、数日、ニヤニヤ眺めます。       

         

          

           

      上が電源部。右が入力側。       

      後ほど、1段目から2段目への抵抗は、リップルを除去しきれずにコイルに置き換わることになりました。       

            

   反対側から。         

         

           

   上がアンプ部分。       

   こっちはぎっちりです。       

  取り付けてから、この上に初段ードライバー間のFBラインを入れます。        

  後にケースを加工します       

       

       

       

 最初の姿です       

 トランス穴だけはいつも開けてもらっているのでした。       

 そして、裏蓋の穴も加工してもらっています。        

       

穴を開けた写真です       

後ほど放熱穴を追加で開けることになりました       

        

       

試運転の様子です。       

まだ上板に放熱穴は開いていません。       

あり合わせのコイルを使っているのが悲しいです。    

     

        

●調整(留意点)       

 まず、チョークは悩んだ結果必須としました   

 これは、CRフィルターではリップルが除去できなかったからです。   

 MOS-FETでの除去も考えましたが、回路が平ラグ1つ分増えてしまいます。   

 これはそれだけ製作に手間がかかりますので、やめました。   

     

 また、当初はUL接続でしたが、これも三極接続にしました。