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水平対向エンジンのメリットって何?

A.わからん。スペース要件?

本件については、ネット上でも、チューニング屋や車屋ですら、あまりしっかり定性的、定量的に語れていないことが多いと思う。なので、あえて設計側から話をします。




私の車を見るときの扱いは以下のようにグルーピングされておりまして


1)呪われてる関係の車:損得考えるとあり得ないんですが、もっていたい車
2)気になる車:何らか気に入るところがあって機会があったら持ってみたいなって思える車。
        所有欲のかられる車
3)憧れの車:所有したいというとそうは思わないのですが、誰かが乗っているのを見たり、ちょっと乗せてもらいたいなと思う車。
       永遠のあこがれにだからいいんですよ!
4)興味のある車:話のネタには面白いと思った車
5)まったく興味のない車。:大多数


今回話題に挙げた水平対向エンジンを持つのはスバル(インプレッサ)、ポルシェ(多数車種)で、ともに(2)の車両です。なのに別に嫌いな車じゃないんですよね。
両社とも、何回か所持を検討しました。2台目として。
なので、そこそこは気に入っている車ではあるんですよ。

そのうえで言いますが、私が考えるに水平対向の意味、水平対向のメリット・デメリットって
以下のような感じだと思うんですね

【メリット】
・重く固いものを低い位置に配置できる
 (事故の時に重量物を下にもぐらせることもできる)
・全高を低くできる
・ボクサーを構成するとピストン方向への振動が軽減される
・直四より全長が短い(ただ、V型とは同じ。星形のような同位置配置よりは長い。)


【デメリット】
・ボクサーを構成すると回転脈動が通常に対して2倍程度に悪化する
・部品点数が多い
・左右に重いものを配置することになり、支持が大変になる。
・メンテナンス性に劣る
・ターボの場合、ターボ設置場所と配管が・・・さらに下に置いたら低重心の意味がなくなるよねぇ!。
・横に広い


でもね、ここで私、思うんですよ。
これってそんなに生かすところのあるメリットかい?って

・重いものを低い位置に搭載できる
ですけど、最近は「低重心」なんて歌っている車が少なくなっているのはなぜか
また、ミニバンが一昔前に比べてコーナーでロールフィールがすごくよくなったのはなぜか

最近は、重心は一要素でしかなく、ロールセンターより重心を下になるよう設計することで、
車両は安定させられるノウハウができたため、別にこれがそれほど優位であるとは思えません。
つまり、最近は低重心であるから安定性が高いと一概には言えなくなっております。


・全高を低くできる
これは今でも生きている。 でも、インプレッサってそんなエンジンフードが低い車でしたっけ?って思うんですよね
ポルシェは・・・まぁ、低いよね。短いよね。


そして
・ボクサーを構成するとピストン方向への振動が軽減される
一見、エンジン振動的には有利のようですが、これの背反するデメリット
・ボクサーを構成すると回転脈動が通常に対して2倍程度に悪化する
を鑑みるとそうでもない。
前者はエンジンマウント位置、およびマウントの適合で解決することになる。
今日日の4気筒FFなら、ペンデュラムマウントとトルクロッドですね。置き換えて考えてください。

後者は相当ダンパーとフライホイールの設計、パワートレインの強度で解決することになる。

後者はむつかしいことは省略すると、後者は「跳ね返り先がコスト」であったり、「背反性能が動力性能に直結する」事項であったりしがらみが大きい。
設計的にはつらい方向に行くように私には思える。

一方、デメリットとして

・横に広い
私がスバルが水平対向を続ける理由で一番よくわからないのはこれで、かつ、このエンジンの致命的な「欠点」であると考えています。
フロントミッドにエンジンを置くということは、車軸上にエンジンが来ることになる。
これのせいでインプレッサはリンクの長さ=ジオメトリ自由度に大きな制約が出てしまって設計に苦労しているように思えます。
おそらく車として一番重要な車両運動性の設計範囲を狭めてまでなぜボクサーにこだわっているのか、
これが理由が私にはわからないのです。


これも、ポルシェならわかります。なぜか。
理由はエンジンと車軸の位置関係です。
エンジンをミッドシップまたはRRで縦置きする限り、エンジン位置と車軸位置がずれてくる。
例えば959なら前側に、ケイマンなら後ろ側に。事実上トランスミッションの位置から長いリアリンクが出ています。
あれならこのデメリットは発生しません。


結論として、私が思う限りでは、今の水平対向エンジンを乗せる意味・おいしさは
「全高を低くしたい理由がある」「ロール設計上、それでも重心を低くしたい何か理由がある」
時に、メリットが出るように思えます。

そして、車両前後方向においてエンジンと同位置に、他に車両左右方向にスペースが必要な部品がないことが
積載条件になるように思えます。



もし、としか言えませんが、スバルがただ、「コダワリ・個性・売り文句」として水平対向を採用しているのであれば、
そろそろそのしがらみから解かれる方がよいと思います。
もっと自由な選択肢をもってエンジンを選んで車を作った方がいいのではないかと思います。
その選択の中で、やっぱり技術的に水平対向の方がメリットが大きいと考えた時、その車に乗せればよいと思います。

もし、ロマンが欲しいのであれば、手段ではなく、車両の方向性や味付けといったところにロマンを求める方が健康的だと思います。


スバルの技術者さんをなめているわけではないので、きっと何かあると思うんだけど、ね、
本当にわかんないのよ。なんで水平対向を採用しているのか。なんで直4やV6じゃないのか。技術的な理由が。


もっとも、私は車両運動性能設計を生業にはしていないので、専門職の諸兄からすると私のわからない
画期的に有利な何かがあるのかもしれませんが、もし何かご存じならば教えていただけたら幸いと思います。
スバルが何を思って水平対向を使っているのか、よくわからなくて気持ち悪いのです。


こう書くと、ロータリーだってメリットなんてないじゃん。
FC好きだから、他の車をを非難しているだけ、自分の乗っている車については目をつぶっていると思われるかもしれませんが、
そうではないことを下に書いておきます


ロータリーの
【メリット】
・低い位置に搭載可能で、省スペース。
・全長が短い。
・トルク脈動が小さい。
・振動も小さい。
・構成部品が少ない。
・高回転時のピックアップ、立ち上がりともにスムーズ。

【デメリット】
・ポートタイミングが固定
・圧縮費が固定
・構成部品が重い
・シール1つの飛びでエンジンが半分終わる。
・(ロータリーのせいではないが)マツダの補器が弱い。コストダウンでよく失敗する。
・低回転時のフラクチュエーションが大きい(理由不明)
・レシプロがよくなってきていて、ロータリー係数をかけられると割に合わない出力。
・燃焼室が長くなりがちで、燃焼設計がむつかしい。
・レシプロのように全域フラットなトルクとか無理。
・共通部品、構成部品が専用設計で安くならない。
・技術革新が進まない(マツダだけで開発)



ぶっちゃけ、今重要とされる「エミッション性能」「万人受けするトルク特性」に致命的に構造的な不利な点があるんですよね。
また、エンジン自体も昔のL型のようにレシプロだから高さが・・・ってことはないですよね。
事実ロードスターだって、ファミリアの時代のエンジンでも、あの高さで作れているわけです。


なので、マツダはあれだけこだわったロータリーを特別なエンジンとしてロータリーが合う車だけに乗せることにして
ファミリア・ルーチェ・カペラからおろしたんですよ。
ロータリーエンジンというのは「手段」であり、「目的」であってはだめだと立ち位置を考え直したんですね。
そのうえで、次の売りとして「人馬一体」という実現したい姿と「居住性」「デザイン」「レシプロの効率化」という技術を追い求めたんですね。


まぁ、御託を並べるより最後にバッサリ言っちゃいますが、
そもそも、私はロータリーだからRX-7に乗っているわけではありませんので、ロータリーのことはそんなに信奉はしていないんですよ。
あいつらに呪われているから致命的理由がないとおりれなくなっているんです。
あいつらって?あえて言うと「マツダ流クルマづくり」「人馬一体」といいますか、もやもやと車から出ているどす黒い何かです。



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